2024個人的な読書メモ
 
★★ もう一度読みたい
 ★勧めたい  
2023年はこちら
 
   
8/29   赤赤夜 (かぐよ)
      澤田瞳子
光文社2024 
★★  「赤」二つ並べて「かぐ」。文字が作
れなかった。平安時代の富士山の
大規模噴火の遭遇した人々の物語。
「小黒は鷹取が接したこの一年間の
凄絶さを分かりはしない。だがその
すれ違いがあればこそ、人は互い
に言葉を交わそうと努めるのではあ
るまいか。」全冊著者の直筆サイン
入りでした。 
8/27
 
あいにくあんたのためじゃない 
      柚木麻子
新潮社2024  
 ★ こちらも毒の効いた短編集。コロ
ナ禍、SNSはますます力を増し
一般の人々が巻き込まれ、ネット
上でさらされ・・・ステレオタイプで
ないところがお手柄。文学の力。 
8/22 ツンデミック          一穂ミチ  光文社2023 
★★  今期の直木賞受賞作品。短編集。
ひねりのきいた設定に最後の落
とし所に裏切られるのが心地よい。
ツンデミックはパンデミック。積ま
れていつかもしれない。 
 8/20 あけくれの少女
      佐川光晴 
集英社 2023
★  なに?あけくれって。あけくれてい
なければ生きていけなかった昭和
平成を生きた女性の話。女の子が
主人公はめずらしい。 
8/6 悟浄出立
   
 万城目 学
新潮社2024 
★  中国古典を題材にした短編集。タ
イトルは一作目。いろいろ悩ましい
ブタの姿の沙悟浄。歩く順番を変
えたら景色が違って見えてスッキリ
ぐらいの話。虞美人、司馬遷有名
すぎる人たちの一場面集。好きだ
な。小説の醍醐味。
 
8/2 新・紫式部日記      夏山かおる 日本経済新聞社
2020 
  こちらの興味を優先して読んでしま
うからか、前半は物足りない。後半
は思わぬ展開。やはり道長との関
係は濃い以上。何をやらかすのか
。紙も?もとんでもなく高価な時代
の貴族達の浮き沈み。 
7/26  地雷グリコ 
       青崎有吾
2023 
 ★  面白い設定だけどずっとゲーム?
と読み進めていったら、楽しくなっ
てきた。マイペースの高校生の群
像は興味深い生態。既視感を感じ
ないのが新鮮。
 
7/20 われは熊楠 
       岩井圭也
2024
 ★ 南方熊楠の一代記。名前は知って
いたけど粘菌とかわからないまま。
慶応3年生まれ、何を追いかけて?
小説だから分かりやすいことも。
 
7/18  燕は戻ってこない    桐野夏生 集英社2022 
 ★ 代理母としてぐらを生んだヒロインは
契約という状況の中でも自分の尊厳
を見失わなかった。それがタイトル。
あー重かった。
7/10   あまりに野蛮な
(上・下) 津島佑子
講談社2008
 ★ 台湾が日本の植民地だった頃、夫と
もにフランスに渡ることを夢見ながら
台北の狭い日本人町で子どもを亡く
した主人公、もう一人は身内ながら
手紙だけで本人を知るいい年齢にな
った女性。共通点は子を亡くし、山に
想いを持つこと。作者の歴史への切
り込みは激しい。 
6/24  万両役者の扇 
     蝉谷めぐ美
新潮社2024 
  江戸の芝居通になれそうな色々な職
種の人々が織りなす物語。主役は芸
を追求してやまない千両役者だが、
取り巻く人々の人生まで狂わされる。
6/22 娘が巣立つ朝 
     伊吹有喜
文藝春秋2024 
一人娘の結婚まで。途中から中心は
熟年夫婦に。半年にわたる悲喜こも
ごも。エピローグ以外は娘、母親、父
親の視点で語られる。
 
 6/21 権記   
★★  作者は藤原行成。大河ドラマ関連で
読んだら面白かった。現代文、読み
下し文、原文、解説でワンセット。読
んだのは現代文と解説だけだけど、
平安上級貴族のお仕事を垣間見るこ
とが出来て生活なかなか。
 
6/16 夏雲あがれ
     宮本昌孝
集英社2002 
   時代小説。舞台は江戸。3人の若者
は藩の大事に命がけで関わることに
なる。テレビドラマを見ている感覚。
飽きないけど、キャラクターばかりの
ようで。南伸坊の装丁と挿絵が好き。
6/14 葦舟、飛んだ 
     津島佑子
毎日新聞社2010 
  小学校の同級生が突然死んだ。50
年ぶりに再会した仲間は秘密を知る。
それを明確にするため調べが始まる。
先は戦争中の満州、シベリア。孫や
子供達も参加して広がって行く。
6/9  水車小屋のネネ      津村記久子 毎日新聞出版2023
★★ タイトルからも装丁からも物語のヒ
ントは? 読了すればそこに引き寄
せられようにやってきたやさしい人
々物語。人が留まるには理由がある。1981年から2021年間の長編。
6/4  半減期を祝って       津島佑子 講談社2016
  3編からなる短編集。タイトルの物語
はセシウム137は30年後半減した。
その頃の日本はとんでもない社会に
なっていた。他の2編もエッジが効い
ている。絶筆。
6/1
まいまいつぶろ       村木 嵐 幻冬舎2023
  8代将軍吉宗の長男長福丸は身体
が不自由である上にその言葉を聞
き取れる者がいない。廃嫡がささ
やかれる若君に耳のよい身分の低
い若者が使えることになった。順序
よく書かれているので読みやすい。 
 5/30 ジャッカ・ドフニ
海の記憶の物語
      津島佑子
 
 集英社2016
 ★★ タイトルだけでは分からない。459頁
の長編は17世紀のキリシタンの迫害
の歴史の中で翻弄され国外に逃げた
アイヌの血を引く少女を主人公に様々
な語り手によって綴られる物語。
 
5/25
 
源氏物語を楽しむための王朝貴族入門  繁田信一  吉川弘文館2023 
 ★ 歴史文化ライブラリー578。つい上位
の貴族に目が行くが、この時代の皇
子とはいえども権力者がついていな
ければ惨めなもの。だから光源氏は
臣下に下ったわけだ。皇女、貴族に
あてて源氏物語と歴史上の事実が
比較されるのが興味深い。
5/22   私労働小説
 ザ・シットジョブ
  
ブレイディみかこ
 角川書店2023
 ★★ シット・ジョブとはイギリスにおいては「
くそのような仕事」、つまり低賃金で社
会的に報われない仕事という意味だ
そうだ。それでも作者はいう「私のシッ
ト」は自分で決める。短編がいっぱい。
   
5/17  女人入眼
     永井紗耶子
 
中央公論社2022 
 ★ 朝廷から頼朝の娘大姫の入内を進め
るために派遣された主人公衛門。実は
幕府の文官のトップ大江広元の娘であ
った。都も鎌倉も男も女も権力闘争ま
っただ中。「木挽町・・」より面白かった。
 
5・15  岩倉具視 
       永井路子
文藝春秋 
  大河ドラマを史実とは思わないが、相
当影響を受けている。最下級の公家が
明治維新なぜ歴史の表舞台に立てた
のか。決まり切った言葉の使い方を見
直していくと色々なことが見えてくる。
 
5・10 
成瀬は信じた道をいく     宮島未奈 新潮社2024 
  成瀬は京大生になった。起点は自分
の街、膳所。近江観光大使となって
スマホを持ちあちこちに登場する。あ
の子! 注目されることは織り込み済
み、観光大使の服はいまや普段着。
 
5・8 成瀬は天下を
取りにいく

宮島未奈
新潮社2023
本屋大賞受賞
  成瀬あかりは自分で決めたことはや
り遂げるが信条。そのため誤解も多い
が幼馴染とM-1に出場。いつもいくつ
かのことに挑んでいる。近江の国に
行きたくなった。もう乗せられている。
4・25  黄色い家  
川上未映子
 
中央公論新社 
  2023 
 ★ 読売新聞に連載されていたそうだ。なかなか
に朝向きではないような。延々と続くどうしよ
うもない疑似家族。少女は生きるために危な
い仕事に手を染める。本当の親ではない女
性は子供にやさしくすることはできるが・・・ 
最悪の将軍 
朝井まかて
集英社2016
  最後の将軍と読み違えた。うっ! だれ、そ
んなタイトルの人。犬公方綱吉でした。いか
に彼が儒学を尊び、文政への移行に力を尽
くしたかが描かれる。青年期から没まで。 
4/14  星を編む 
凪良ゆう
講談社2023 
 ★ 「汝、星のごとく」の続編。人々は恐ろしく
穏やかにつながり合って生きていく。
それが編むであり、星はひとの思い
なのだろう。夕星はその象徴のように
海の上に登場する。読みやすい。
 
4/11  藪医ふらここ堂  朝井まかて 講談社2015 
  小児科医の三哲は子供の生きる力を
信じろと薬を出さないし、もっともらし
ことも言わないので藪医者と言うこと
になっている。娘と押しかけ弟子と市
井の人々の綾なす物語。事件はある
けどもう一押し。
 
4/7 八月の御所グラウンド 万城目学 文藝春秋2023  
 ★★ マキメが直木賞を取った。比較的おと
なしめのマキメワールド。京都の夏、
御所内のグラウンドでは不思議な野
球の試合が行われていた。しかけは
充分。すんなり読める。
 
4/6   蹴れ、彦五郎 
今村翔吾 
祥伝社2022 
   初期短編8作。タイトルは今川義元の
嫡子氏真の幼名。蹴れとは得意の蹴
鞠のこと。他の意味もある。彼が蹴っ
たのは戦国大名の生き方だった。中
には人形作りのホラーめいた短編も。
4/4  のち更に作咲く
澤田瞳子
新潮社2024 
  大河ドラマの影響でつい手に取ってし
まう紫式部関係。主人公は違う。話は
面白いし馴染みになりつつある平安
貴族の暮らし。人々の浮き沈み、不
条理激し。帯ずるし。
 
4/2  笑い三年、泣き三月。 木内昇 文藝春秋2011 
 ★ 昭和21年の上野駅、三河万歳の男と
戦争孤児の出会いからとにかく生き残
ったんだからと三流ストリップ劇場を舞
台に展開する物語はタイトルそのまま。
3/25  月と日の后 
冲方 丁
 PHP研究所2021
 ★ 道長の娘で12歳で一条天皇の后にな
った彰子。女房一人が源氏物語の紫
式部。后は女房から女性には必要と
されなかった教養を学び国母に成長す
る。関係図は始めにおいてほしかった。
大河ドラマと比べながら興味津々。
3/23  常設展示室 
原田マハ
 新潮社2018
  短編小説集。主人公は違うけれど40
歳ぐらいのクリエイターではない美術に
関わって生計を立てている女性。年齢
なりにいろいろあるが、アートの世界は
いつも変わらず常設展示室のように。
 
 3/17  ごんたくれ 
西條奈加
文社 2015 
 ★ 主人公の名前は変えられているが
江戸時代の京都で活躍した長沢蘆
雪と曾我蕭白という二人の天才絵師
の活躍を軸に描く。タイトルは読めば
すぐ分かる。二人の作品を知らない
方はぜひ画集を見ながら。
 
3/14   象牙色の賢者 
佐藤賢一
文藝春秋 2010 
  黒人と白人農園主の子供から三代
目「椿姫」作者アレクサンドル・デュ
マの父は同じ名前の「モンテクリスト
伯」「三銃士」を書いた文豪。祖父は
ナポレオン軍の将軍だった。自伝の
形を取りグテグテと語られる半生は。
3/8   きらん風月
永井紗耶子 
講談社 2024 
きらんは鬼卵と書く。風月を愛でると
いう江戸時代、主人公の名前である。
煙草屋の親父として寛政の改革を行
った隠居後の松平定信と語り合う。す
いすい読めてすっとする。
 
3/6  ハヤブサ消防団
池井戸潤 
集英社 2022 
  展開と設定がわかりやすくて面白く
てついつい。でも終末はなんかつじ
つま合わせのようで読み応えが一
気に減った。
 
3/3  海の都の物語
(下)塩野七生
 
 新潮社2001
(中央公論社1980) 
 ★ 中世の時代にヴェネチアでは異端裁
判も女性が魔女扱いされることはな
かった。交易でしか立国の余地がな
かった共和制の国は権力が偏ること
のないシステムを作り、強固なインテ
リジェンスで自国の独立を図った。そ
こを丁寧にえがく。最後はナポレオン。
 
2/25  海の都の物語
(上)塩野七生
新潮社2001
(中央公論社1981) 
 ★★ 「ヴェネツィア共和国の一千年」という
副題がつく。塩と人しかなかった人
々はラグーに木を打ち込んで土地を
作った。人口10万人ぐらいの一貫し
た戦略。壮大な物語は文学ではなく
地理のコーナーに。再読。
 
 2/18 ローマ亡き後の地中海世界
(下)塩野七生    新潮社 2009  
 ★★ どんな終わりになるのかと思ったら、
最後まで海賊。イスラムの国トルコは
海軍のトップを海賊に。彼らは海賊を
しながら任務を果たす。その中でベネ
チアは貿易立国として独自の道を歩
む。一神教の戦いはシビアで・・・
2/15  ローマ亡き後の地中海世界
(上)塩野七生    新潮社 2008
 ★★ 世界史は嫌い。全くの空白地帯を埋め
ようと手に取った。本書は海賊の説明
から始まる。沿岸の人々は奪われ拉
致される。イスラム勢力拡大や対する
キリスト教世界。
 
 2/10 夏物語
川上未映子 
文藝春秋
2019
 ★ 女性の体のような鉛筆の線が印象的な
表紙。長い髪を上げているような。でも途
中から線は奔放に動いてあるはずの形
には辿り着かない。内容の振れ幅が大
きいかもしれない。でもね、刺さるんだ。
1/31  ある男
木内昇
文藝春秋
2012
 ★★ 日本の近代化の中、市井に生きる男たち
を取り上げた短編集。主義主張で中央政
府に戦んだわけではない人々はすじを通
して己を貫く。読み応えあり。
1/23 風神雷神(下)
原田マハ 
PHP研究所
2019
 ★ 工房の下働きカラヴァッジョまで登場。最
後の晩餐の前で宗達と芸術について語
らうという場面まで。もう荒唐無稽ではあ
るが、楽しんで。 
 
 1/22 風神雷神(上)
原田マハ 
PHP研究所
2019 
★  主人公はタイトルの作者俵屋宗達である。
信長に名前をもらい少年使節と共にロー
マ教皇に「洛中洛外図屏風」を届けるとい
う設定。さてさて読みやすいからドンドン
進む。 
 1/20 福翁夢中伝(下)
荒俣 宏
 
早川書房
2023  
  後半は定まった世の中は辛い。でも憲法はまだ。
子供が駆け回っていたという家族ぐるみの慶應
義塾は経営の近代化を迫られ・・・。上巻と共に
登場する多様な人々がつながっていくのが興味
深い。最後は土葬の諭吉の独白。 
 1/18 福翁夢中伝(上)
荒俣 宏 
早川書房
2023 

一万円と言えばこの方、福沢諭吉。慶應義塾の
創立者、砲火の音に構わず授業をしたとか、あ
まりよく知らない超有名人。緒方洪庵の適塾に
咸臨丸。幕末明治をどこで、だれと、どのように
生きたのか。若い福沢、後年の福沢、更に作者、
速記者もいたしいろいろな人の証言のような形で
夢中は進む。新しい日本語への貢献も興味深い。 
1/11  月ぞ流るる
澤田瞳子 
文藝春秋
2023 
 ★ 大河ドラマを前にこちらも楽しみ。50歳を
過ぎたでもまだ栄華物語を書いていない
赤染衛門が主人公。平安貴族の生活は
興味深い。読みやすいし。登場人物もな
かなか。
1/8  青春をクビになって
 額賀澪

文藝春秋
2023 
 ★★ 「こをろこをろ」海水をかき回す様を表した
オノマトペ。主人公の大学の非常勤講師
は雇い止めに危機を感じながらも古事記
への思いを。澪さんのギアチェンジ、次作
が楽しみなってきました。