文庫のおばちゃんの読書記録  2022  
   
 年末正月用品買い出しの帰り、本屋に寄った。年の終わり、寝る前に読む本の購入を思いついた。食品売り場と
違って本屋は静かだった。いつものように平台を一当たり見ていたら(この時間が楽しい)上間陽子の「海をあげる」
を見つけた。筆者は琉球大学の教授、普天間基地近くに住む。初めて読んだのは小説ではなく「裸足で逃げる沖縄
の夜の町の少女たち」というタイトルの聞き書き。なぜ女性達は暴力に支配されるのか、沖縄独特の男たちを育むの
縦社会の伝統が女子に影響を及ぼしているのではないか。男たちが意識しない男性優位。久しぶりに読書記録を書
いてみようと思った。
 
 
●読了日 ● タイトル ● 作者 ●出版社 ● 発行日
         
         
         
         
 2022,5  火定 澤田瞳子   PHP  2017
タイトルは「かじょう」と読む。本書の表紙は業火に焼かれる人々で真っ赤。天然痘が天平時代の寧楽(奈良)の都を
襲う。。パンデミックによる悲劇と手当に当たる施薬院の医師達の奮闘が描かれる。建立に携わった光明皇后、後ろ
立の藤原氏は一度も訪れることはなかったという。教科書の挿絵とは違うなあ。専門の作者の指摘の一文であるか
ら本当だろう。このときは新羅からやってきた。辿れるのである。タイトルの意味は物語のハイライトで明かされる。
 2022,5  神坐す山の物語  浅田次郎  双葉社     2014
奥多摩の標高1000mの御嶽山がタイトルの山。「神います山」と読む。30あまりの宿坊があり八百万の神々と神官や
家族が暮らす。語り手の少年はその一族。伯母が語る不思議な話は語り継がれてきたり、実際に見聞きした話として
登場する。どこまでが。いやそんなことよりお話しを楽しもう。霧が良い景色を作っている。おすすめ     
 
 2022,4  4人組がいた  村薫 文藝春秋   
元村長に元郵便局長等々、山村の名士達も今やただの人。相手をしてくれる人さえない。男3人、女一人の4人組は
日がな一日、村の入り口に集まり通りがかる人を待つ。といって用事があるわけでもなく。そのうち明らかになる ・・・
         
2022,4  李王家の縁談  林真理子 文藝春秋 2021,9
美しいだけでなく聡明で率直なことで知られる梨本宮伊都子妃が主人公。明治から昭和、戦後まで。天皇家、皇室、
宮家、華族と高貴な方々を相手に縁者の縁談をまとめていく。遺された日記をもとに小説化。へへぇと興味本位で手
にとり最後まで一気に。娘の万子(まさこ)が東宮妃の選からもれたと分かり、相応しい相手として選んだのは李王家
の跡継ぎだったと言うところから始まる庶民には知るよしもないみなさまの物語。
 
2022,4  漆花(しっか)ひとつ  澤田瞳子  講談社  2022,2
何年か前の大河ドラマ「清盛」の時代が舞台、父親の忠盛や源義朝、鳥羽上皇に崇徳上皇、美福門院や待賢門院、
信西やらいっぱい出てくる短編集。あのときの知識が役に立った。というと明らかに俳優さんの演技もいっしょだから
ちと鮮明にすぎるかもしれないが、前後関係はわかりやすい。時代をていねいに描かれた物語は興味深かった。
 
 2022,4 名残の花   澤田瞳子  新潮社  2019
江戸時代、天保の改革で厳しい取り締まりをし妖怪と人々を恐れさせた鳥居耀蔵。明治5年、77歳となって東都(東京)
に隠居として生きる。すっかり異国風を良しとする政府のやり方に腹を立ていたが、修行中の能楽師との出会い、次々
と起こる事件を解決することになる。本文から「ただ己の道だけを見つめ、そのために精進すればよい。」「この明治とい
う世にあって、(略)世の中の趨勢に目もくれずに己の道を歩む者は、みな現世を生きる実盛なのだ」・・・・
 
 
 2022,4 繭の季節が始まる   福田和代  光文社  2022.3
 コロナ禍以外にもたくさんのパンデミックを経験した人類は、収まるまでは繭に入るという生活方法を選んだ。出歩け
るのは病院、警察、消防、通販の配達員など。一般の人々の移動は解除になるまで厳禁。仕事、学校はリモ−ト。
犬の散歩は例外で各自時許可された時間、場所を散歩する。さてそんな人気のいない街で事件が起きる。主人公
は三年目の彼女のいない警察官。相棒はAI搭載のロボット犬。
 
 2022,4  俥宿  出久根達郎  潮出版社  2001、9
「くるまやど」と読む。明治の頃に始まった人力車は大いに流行ったが、鉄道や鉄道馬車を相手に苦戦もする。ヒロイ
ンは今ではなくなってしまった粋な町名を駆け抜ける俥屋の女車夫。車夫の地位向上運動に奔走する若旦那に翻弄
されながら様々な階層の人と出会い世間をみる目を広げていく。時は鹿鳴館の時代だが、庶民の慎ましい暮らしぶり
や心意気がていねいに描かれる。
 
 
 2022,4 ツタよ、ツタ   大島真寿美  実業之日本社 2016、10 
表紙の司修の立ち向かう女性の版画はヒロインか。琉球王朝の時代、祖父は家老のような仕事をしていた。つまり
名家なのだがその跡取りツタの人生には名誉も財産も本人に沿ってくれることはなかった。何かに引っかかりながら
その正体が分からず大事な決断をした後、そういうことだったのかと気がつくが本人は引き返すことは許されず。いつ
の間にか二度の結婚をし、子をなし、世間を騒がす小説を書いていた。幻の作家? 死の床から物語は始まる。 
 
 2022.4  古本食堂  原田ひ香   角川春樹事務所  2022,3
 語り手は二人。交互に登場。ときにまどっろこしく。舞台は現代の神田神保町の古本屋。ていねいに集められた古
典の希少本。店主だった兄の急死、その価値に後始末にやってきた店主の妹の珊瑚とほとんど交流のなかった親
戚の大学院生の美希喜はとまどうながらも自分の歩幅で歩き出す。出合いからの日々が語られる。それにしても
神保町には美味しそうな物がたくさん。人生の終局を迎えた珊瑚。将来が見えない美希喜が選んだのは。
 
 2022,4  青義堂 今村翔吾  小学館  2019
 元忍びの寺子屋の師匠は亡き妻の示した道を悩みながら歩んでいた。筆子が少ない貧乏寺子屋であったが、
様々な出来事は師匠にも子供達にも等しく成長の道を歩ませる。恨みも絡んで凄みの忍び達から繰り出される
技はエンターテイメント。
 
2022,4   童の神  今村翔吾  2018
 後に大江山の酒呑童子と呼ばれることになる若者の物語。童とは平安時代都の外に暮らす人々を指す。土地を
持たず食べられないので盗賊になったり、技を磨くなどそのルーツは国内にとどまらない。治安を乱すもの達と解
されたが、その中でも神と呼ばれ尊敬を集めたのが主人公だった。願うのは人として認められること。
 
2022,4   安政大変  出久根達郎  文藝春秋  2003,8
確かに安政という時代は大地震、大火、大獄に政変と大変な時代だった。あとがきで見つけたのは有名な「鯰絵」は
この時代だけと言う指摘。鹿島神宮の要石があちらこちらに登場。江戸市中の人々を中心にわかりやすい人情物。
人々の生活が細部にわたって描かれていて興味深かった。藤田東湖はそんな大酒のみだったのか。
 
 
2022,4   神さま2011  川上弘美  講談社  2011,9
わたしは弁当を持ってくまといっしょに近くの川にハイキング行く。その一日を描いたのが。デビュー作「神さま」
東日本大震災後半年後に書き直して発表したのが本書。淡々とした時間の流れはほぼ同じ。日常のほぼは
大きな違い。
 
 2022.4 14歳の世渡り術
生き抜くためのごはんの作り方
  悩みに効く16人のレシピ
 河出書房新社 編  河出書房新社  2022,2
卵、うどんを材料にした料理が多い。料理をしたことのない中高生むけか。ほっこり。食べると言うことはそういうこと
だ。編集部が変に調整しなかったのがよかった。それにしても皆さん有名な料理関係の方なのにいろいろあったねぇ。
 
 2022、4 小説集北条義時   海音寺潮五郎、高橋直樹。岡本綺堂
 近松秋江、永井路子、三田誠広
 作品社   2019,9
大河ドラマ「鎌倉殿の13人」が始まって主人公北条義時を表題にしたこの本を手に取った。ところが脇役、もしくは
周辺にいた人物が主人公。しかしながら頼朝が亡くなって承久の乱あたりまでの幕府の様子が分かる。義時は中
心にた。そして戦争中以外は逆臣などと言う汚名は着せられていなかった。中には脚本もありこんな感じなんだと
少々大仰な台詞も面白かった。はじめて読んだ海音寺潮五郎の梶原景時からは視界を広げてもらった。ドラマが
楽しみになった。
 
 
 2022,3  昭和40年男
 〜オリンポスの家族〜
 佐川光晴  集英社  2019,9
この装丁?と思ったが作者の本は読みことにしているので借りた。時代が分かるから読みやすい。オリンピックを目
指していた体操選手の主人公はけがで主夫となる。代わりに陸上選手だった妻がスポーツ関連会社でモーレツ社員
となる。子育ても家事もこなす主人公、「じゃりん子チエ、星一徹、百恵ちゃん」を冠したタイトルで家族と向き合い日々
が描かれる。スポーツの世界のある一面も興味深い。鍛錬の結果、鉄棒選手ととして日の目を見るというサクセスハ
ッピーエンドストリー、そうだよねと。この本同世代には貸し出ししやすいなぁ。
 
 2022,3  彼女たちの部屋  レティシア・コロンバニ
 斎藤可津子:訳
 
 早川書房   2020.6
「三つ編み」の作者の2作目。パリにある宮殿は修道院だったが、現在は女性達の人権を守るシェルターになっている。
部屋数室。救世軍のトップの夫婦が悲惨な生活を送る19世紀のパリの女性を保護するために奮闘した。それが一つ目の
物語。もうひとつが現代の心を病むエリート女性弁護士の物語。夜8時以降人々は自分の部屋の下の路上で起きてい
ることに目をつむる。飲むか眠るか自分の一日を閉じる。私もそうだった・・・。
 
 2022,2  グレコワールと老書店主   マルク・ロジェ 
 藤田真利子:訳
 東京創元社    2021,6
直訳のタイトル。そうなんだけどもうちょっと・・・。主人公は高校卒業認定試験に落ちやっと潜り込んだのは老人介護
施設の厨房助手。そこで彼は元書店主に出合う。本が読めなくなっていた彼は、本に全く興味のなう若者に朗読を頼
む。朗読は若者を鍛え、ホームの空気は変わる。老人の無茶な最後の依頼は物語をより血の通ったドラマに展開さ
せる。この紹介はつまらない。作者は朗読者、初めての小説だそうだ。自然の描写が特に良い。活字の力。 
 
 
2022、1、   海をあげる 上間陽子  筑摩書房  2021、10 
         
<なめ文庫>
 
 
2022,1、  バッタを倒しにアフリカへ(児童版)  前野ウルド浩太郎  光文社   
<なめ文庫>
 
 
 2022,1  塞王の楯 今村翔吾  集英社   2021,10
矛盾と言う言葉があるが、楯は盾の古い形。幼い頃落城という経験をした匡介は城の石垣作りを担う技術集団穴太衆に
拾われた。「絶対に壊されない石垣を作る」ことで平和を願い技術を磨き次の頭となった。もう一人鉄砲を進化させること
で戦をなくそうと考えたのが国友衆に属す彦九郎。二人は同じ願いを持ちながら戦場では相反する楯と矛の関係だった。
互いの仕事を認め合いながら、命がけの戦に挑む。時代は関ヶ原の戦いの直前、場所は琵琶湖に面した大津城。
エンタテイメント、楽しく読めた。アニメの原作になりそう。<市立図書館>
 
 2022,1  転がる空に雨は降らない 小野寺史宜   新潮社  2012,7
亡くなったり失踪したりした父親との葛藤がベースの物語が多い作者。物語の主人公はプロサッカー選手の灰沢。一人息
子を交通事故で亡くす。その件はトラウマとなり選手生命を脅かす。事故の加害者の息子は19歳、サッカー選手になった。
父親は事故の後、自殺していた。それぞれの物語は最後の章で交錯する。読みやすいし、読後感がよい。<市立図書館>
 
2022,1  ミニシアターの六人   小野寺史宜  小学館  2021,11 
映画の始まりは銀座和光の時計台。夜の10時10分を指す。一週間限定の上映、観客は雨のせいか6人。それぞれの都合
で同じ時間帯の画面を見ている。淡々と一晩が描かれる。各章で映画と見ている人が交錯するが、全ては読後感のため。
映画は終了後、人々の心を動かす。ん? ここがなかなかいい。<市立図書館>
 
 
2022.1  ハレルヤ!  重松清  新潮文庫 2020.7 
あっという間に読んでしまった。大学のブラスバンドの仲間男女5人。今や46歳。解散後はそれぞれの人生を歩む。互いに
連絡を取ることもなかったが・・・。 折り返し、ここからは下り坂、メンバーの一人の突っ走りが仲間を呼び寄せる。ピンチに
輝くのは亡くなったはずのRCのキヨシロー。テレビドラマの原作向き。見たことこのあるような。ウッフフ。<なめ文庫>
 
 2022.1 ムスコ物語 ヤマザキマリ    
 
 番外 2021年
2021、12  三つ編み  レティシア・コロンバニ
斎藤可津子:訳
 
早川書房  2019,4 
映画監督・女優と多才なフランスの方の作品。3人の女性の主人公はカナダ、イタリア、インドに暮らす。別々に進行する3人
物語は交互に語られるが、交わることはない。病気、仕事、身分制とそれぞれに過酷な現代を生きる。タイトルの髪型が未来
を暗示する。表紙は豊かな三つ編みのインドの女の子。<麻生中図書館>
 
 
2021,12  かみさまの貨車     
 <麻生中図書館>